環境情報豆知識

ばい煙、粉じん、粒子状物質などについて 1 ―発生源から出るもの―

 大気汚染防止法には汚染物質の法律用語として、ばい煙、ばいじん、一般粉じん、特定粉じん、粒子状物質などがあり、環境基準の告示には浮遊粒子状物質という用語があります。また、大気汚染の分野で広く、黒煙、SPM,PM,PM2.5、DEP、降下ばいじん、スモッグ などという用語が使われています。これらは一般的にはすすや粉じんなどを示す言葉ですが、各々はどう違うのでしょうか。1では工場・事業場や自動車などの発生源から直接排出されることから排出の規制を受けるばい煙、粉じんなどについて、2では環境中に存在するものについて説明します。

ばい煙

 一般的には燃料やゴミなどを燃やしたときに出るすすや煙を意味しますが、大気汚染防止法では「ばい煙」を定義していて、①物の燃焼に伴い発生する「いおう酸化物」②物の燃焼等に伴い発生する「ばいじん」③物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く)に伴い発生する「カドミウム、塩素、弗化水素、鉛及びこれらの化合物、窒素酸化物」と定めていて1)、いわゆる すすやばいじん以外に燃焼や化学合成等に伴い発生するガス状のものも含めています。各々について規制基準があり、その単位は ①は量規制でm3N/時 ②は濃度規制でg/m3N ③の物質は有害物質といわれ、濃度規制のmg/m3Nですが、窒素酸化物だけはppmまたは総量規制でm3N/時です(②、③のm3Nは排出ガス量)。

ばいじん

 上記②の「ばいじん」について大気汚染防止法は定義をしていません。同法が定めるばいじんの排出基準の測定法であるJIS Z 8808は、煙道中の排ガス(煙)を吸引して固形分をろ紙に捕集し、その固形分の重量を測定して排ガス中の濃度とすることから、煙の中に含まれるすすや硫黄酸化物等の塩類などの高温の煙の中で固体状態である、ろ紙を通過しない物質すべてとなります。

粉じん

 一般的には粉のような細かなちり を意味しますが、大気汚染防止法では「粉じん」とは「物の破砕、選別その他の機械的処理又はたい積に伴い発生し、又は飛散する物質をいう」と定義していて、その成分や粒径等は示していません。そして「粉じん」を「特定粉じん」と「一般粉じん」に分けて各々の規制基準を定めています(粉じん単独での規制基準はありません)。
 なお、「スパイクタイヤ粉じん」は「スパイクタイヤ粉じんの発生の防止に関する法律」で、概略「スパイクタイヤを装着した自動車の走行によって舗装路面を損傷することにより発生する物質」と定義されていて、同法は指定地域内で積雪や凍結のない状態の舗装道路でのスパイクタイヤの使用を禁じています。

特定粉じん

 大気汚染防止法は「特定粉じん」とは、「粉じんのうち、石綿その他の人の健康に被害を生ずるおそれのある物質で政令で定めるもの」と定義していますが、現在政令の定めはないので、石綿(アスベスト)だけです。濃度の測定は空気を吸引ろ過し、ろ紙に捕集された石綿を位相差顕微鏡などで数えて、空気1L中の石綿の本数であらわします。規制基準は石綿の製造・加工等の事業所の敷地境界で10本/L以下、及び作業基準として排出作業現場の隔離、集塵排気装置の使用、薬液等の散布と建設工事場所に作業期間・方法、連絡先などの掲示板を設けることなどです。

一般粉じん

 大気汚染防止法は、「一般粉じん」とは「特定粉じん以外の粉じんをいう」と定義していて、その成分や粒径などを定めていません。規制基準としては同法が定める「一般粉じん発生施設」*について、粉じんの発生を防止するためのフードや集塵機、散水施設の設置及び散水する,建屋内に設置するなどの構造基準や使用・管理基準を定めています。同法は濃度規制ではないので測定方法・単位は示されていませんが、一般的にはmg/m3が用いられます。
 なお、労働安全衛生法は著しく粉じんを発散させる屋内作業場などについて、石綿を含めて作業環境の濃度測定義務などの規制をしています。
* コークス炉、鉱物・土石の堆積場、鉱物・岩石・セメントの破砕機・ふるい など

粒子状物質(PM)

 一般的にはその発生源に関係なく微細なμm単位の固体や液体の粒子をいいますが、大気汚染防止法では自動車排出ガスの定義2)の中で汚染物質の一つとしています。同法はその成分や粒径などは定めていませんが、軽油などをエンジンで燃焼する際に発生し、排気管から排出される未燃の燃料(炭化水素類)やすす、これらに硫黄酸化物等が付着した固形物やミストと考えられます。PM(Particulate Matter) とも表示され、特にジーゼル車からのものをジーゼル排気粒子、DEP(Diesel Exhaust Particulate)といいます。
 排出の規制は、同法の「自動車排出ガスの量の許容限度」の中で「粒子状物質」及びその他の汚染物質の量の許容限度を定め、また、「道路運送車両法」に基づく新車のいわゆる「単体規制」と「自動車NOx、PM法」3)(同法は「自動車排出粒子状物質」の用語を用いている)に基づく使用過程車をも含むいわゆる「車種規制」によって、粒子状物質についてはジーゼル車だけを対象に、車種、車両重量ごとに走行1km当たり(g/km)または仕事率あたり(g/kwh)の排出量の基準が定められています。また、首都圏等の自治体では条例で地域を走行するジーゼルトラック、バスについて粒子状物質の排出基準が緩い、古い年式車の地域内の運行規制やDPF(Diesel Particulate Filter)の装着義務を課しています。

黒煙(ジーゼル黒煙)

 一般的には煙突や野焼き、ジーゼル自動車などから出る黒い煙を言いますが、道路運送車両法では「道路運送車両の保安基準」の中で「自動車の排気管から大気中に排出される排出物に含まれる黒煙」として、また、上記の大気汚染防止法の「自動車排出ガスの量の許容限度」の中で粒子状物質とは別に「粒子状物質のうちジーゼル黒煙」としてその規制値と測定法が定められています。ガソリン車からはほとんど黒煙は出ないので、ジーゼル車からの黒煙だけを規制対象としていることから、この場合には「ジーゼル黒煙」(DEP)といわれます。基準は排気管の中に試料採取管を入れ、排気ガスをろ紙で濾過して黒くなったろ紙の“黒さ”の程度を、未使用のろ紙を100%とした光の反射率(%)で定めています。

1) 大気汚染防止法第2条第1項
  この法律において「ばい煙」とは、次の各号に掲げる物質をいう。
  燃料その他の物の燃焼に伴い発生するいおう酸化物
  燃料その他の物の燃焼又は熱源としての電気の使用に伴い発生するばいじん
  物の燃焼、合成、分解その他の処理(機械的処理を除く)に伴い発生する物質のうち、カドミウム、塩素、弗化水素、鉛その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれがある物質で政令で定めるもの
  政令(大気汚染防止法施行令)の第1条
法第2条第1項第3項の政令で定める物質は、次に掲げる物質とする。
    1 カドミウム及びその化合物 4 鉛及びその化合物
    2 塩素及び塩化水素 5 窒素酸化物
    3 弗素、弗化水素及び弗化珪素  
       
2) 大気汚染防止法第2条第10項
  この法律において「自動車排出ガス」とは、自動車の運行に伴い発生する一酸化炭素、炭化水素、鉛その他の人の健康又は生活環境に係る被害を生ずるおそれのある物質で政令で定める物をいう。
政令(大気汚染防止法施行令)の第4条
法第2条第10項の政令で定める物質は、次に掲げる物質とする。
    1 一酸化炭素 4 窒素酸化物
    2 炭化水素 5 粒子状物質
    3 鉛化合物  
       
3) 「自動車から排出される窒素酸化物及び粒子状物質の特定地域における総量の削減に関する特別措置法」(平成4年 法律第70号)

 

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