規制基準の種類と内容 1 ―濃度基準等について―
環境基準は、環境の保全についての基本理念や基本となる事項を定めた環境基本法に基づいて定められた「維持されることが望ましい基準」で、その対象は主 に人が通常生活している場所の大気、騒音、土壌及び公共用水域です。これに対して、これらの環境を保全するために発生源である個々の工場や事業場から排出 される汚染物質等を規制する(取締まる)基準は規制基準と呼ばれ、大気汚染防止法や水質汚濁防止法、悪臭防止法、騒音規制法、振動規制法、土壌汚染対策法、廃棄物の処理及び清掃に関する法律、ダイオキシン類対策特別措置法などの個々の規制法や地方の条例で汚染物質等の特性や排出実態、地域の汚染等の状 況、また、対策技術の進展状況なども勘案して定められています。
環境基準は政府の努力目標であって、それを超えていても誰も罰せられませんが、規制基準は違反すればその工場、事業場が法令の規定により罰せられます。
この規制基準には、1.個々の煙突や排水口から排出される煙や排水に含まれる汚染物質ごとの濃度を規制する排出基準である「一般排出基準」、「特別排出基準」や工場の敷地境界での濃度や騒音を規制する「敷地境界基準」等、2.工場全体からの汚染物質ごとの排出総量を規制する「総量規制基準」や施設の煙突 ごとの排出量規制である「K値規制」、3.作業等に伴う汚染物質の排出・漏洩等を防止するための「構造基準」、「管理基準」など、種々のものがあります。これらの基準の名称は法律に定められている用語と「いわゆる」として一般に使われているものがあります。
一般排出基準
煙突や排水口から排出される汚染物質の濃度(ppm,mg/l等)をその出口で一定の数値以下に定める基準で、排出濃度規制と呼ばれます。通常、その法 令に基づく許可や届出を要する施設の種類と規模ごとに、また、汚染物質の種類ごとに定められています。さらに、その法令が施行された時点で既設の施設か、 その後の新設かによっても基準値が異なるなど複雑で、一般に小規模施設や既設の施設は基準がゆるく、大規模施設や新設のものには厳しくなっています。 大気については、次の「特別排出基準」との対比で「一般排出基準」と呼ばれますが、水質についての排出濃度基準は「排水基準」と呼ばれ、一般、特別の区分はありません。 なお、「排水基準」の健康項目は、原則として環境基準の10倍の濃度で定められています。
特別排出基準
工場等が集合し汚染が進んだ地域を特定して、そこに新たに立地する施設を対象にばいじんと硫黄酸化物について、より厳しい特別の排出基準を定めているも のです(大気汚染防止法第3条第3項)。ばいじんの基準は「一般排出基準」と同じ形式で共に施設の種類、規模等に対応した許容排出濃度の一覧表で示され、 また、硫黄酸化物の基準は「K値規制」式で地域ごとに定められている係数Kがより厳しくなっています。
上乗せ基準
法律による一般、特別排出基準や「排水基準」だけでは地域の環境を十分に保全できないなどの場合に、地方の条例で法律が定める基準値以上の厳しい基準を 定めるものです。一般に、条例では法律の規定と同じ方式で法律以上の厳しい基準を定めることはできませんが、法律にそれを許す規定がある場合には可能です (例 大気汚染防止法第4条、水質汚濁防止法第3条第3項)。
なお、地方の公害防止・環境保全条例に法律より内容が厳しいと思われるものがありますが、これは次の「横出し基準」のように、法律が規制していない部 分・分野を独自に規制したり、また、法律が規制対象を施設単位で捉えているのに対して、これを工場・事業場単位で捉えて規制するなど、手法や観点を異にすることによって結果的に厳しい規制を取り入れることができるためです。広義にはこれらも「上乗せ基準」と言われます。
横出し基準
法律による一般、特別排出基準や「排水基準」だけでは地域の環境を十分に保全できないなどの場合に、地方の条例で法律が定める基準値以上の厳しい基準を 定めるものです。一般に、条例では法律の規定と同じ方式で法律以上の厳しい基準を定めることはできませんが、法律にそれを許す規定がある場合には可能です (例 大気汚染防止法第4条、水質汚濁防止法第3条第3項)。
なお、地方の公害防止・環境保全条例に法律より内容が厳しいと思われるものがありますが、これは次の「横出し基準」のように、法律が規制していない部 分・分野を独自に規制したり、また、法律が規制対象を施設単位で捉えているのに対して、これを工場・事業場単位で捉えて規制するなど、手法や観点を異にすることによって結果的に厳しい規制を取り入れることができるためです。広義にはこれらも「上乗せ基準」と言われます。
敷地境界基準
汚染物質の排出濃度を規制する場所(測定場所)を煙突や排水口の出口ではなく、工場等の敷地境界線上とする規制基準です。騒音と振動の規制基準はこの敷地境界基準だけで、大気、水質のような発生源での出口規制的なものはありません。 悪臭防止法の大気中の規制基準には、敷地境界線の地上での濃度基準と、この濃度基準を基楚として(遵守できるように)臭気排出口でその高さに応じて算出 される出口での基準がありますが、この基準も敷地境界の濃度基準を基本としています。 騒音、振動と悪臭の規制基準を敷地境界とするのは、これらが通常健康への影響はなく感覚公害であることから、敷地内での発生・排出量を問題とせずに主に近隣の生活環境を保全することを目的としているからと考えられます。 なお、公害関係の法律は「瀬戸内海環境保全特別措置法」などを除いて、全国一律に適用されます(規制基準は地域によって異なる場合がある)が、悪臭防止 法、騒音規制法及び振動規制法は、各要素が限られた地域的課題であることから、知事等が住民の生活環境を保全する必要があると認めて指定した地域だけに適 用され、無指定の地域にある工場や事業場は規制を受けません。但し、多くの地方自治体では条例でこれらについても適用地域を指定せずに独自の規制を行って います。
煙突や排水口の出口での濃度は、各々の出口の前できれいな空気や水を加えれば全体が希釈され、低濃度になります。このため、例えばボイラーなどの燃焼炉 の場合、燃料や炉の種類によって適正な燃焼空気量はほぼ決まっているのですが、排出基準をパスするために空気を過剰に炉に送るなどして煙の汚染物質濃度を 低下させることがあります。これを防止するために大気汚染防止法では窒素酸化物等の濃度基準については、濃度とともに排出ガス(煙のこと)中の酸素濃度 (過剰空気量)を併せて測定することになっていて、これを施設の種類ごとに示されている標準酸素濃度に換算して汚染物質の(正しい)排出濃度を算出して基 準と対比する式の規定があります。水質汚濁防止法には排水の希釈防止についての明確な規定はありませんが、処理施設や排水系統などでの明らかな希釈は許さ れないものです。


