環境基準は環境基本法に基づき、大気汚染,水質汚濁,騒音,土壌汚染について定められており1)、具体的な基準値と達成期間、適用地域等は環境庁告示で示されています。(ダイオキシンについては、ダイオキシン類対策特別措置法に基づき、大気、水質、底質、土壌についての環境基準が一括して告示されている)
大気汚染と土壌汚染の全項目及び水質汚濁の健康項目2)は汚染物質の項目ごとに全国一律の値で設定されていますが、水質汚濁の生活環境項目3)については川、湖、海ごとに水産や水源としての利用類型等に応じて同一項目であっても適用される基準値が異なります。また、騒音については住居、商業等の地域や対象音源によって異なる値や評価方法が定められています。
これらの環境基準のうち特異なのは、大気汚染物質の二酸化窒素の環境基準だけが「一日平均値が0.04ppmから0.06ppmのゾーン内またはそれ以下」と幅を持った値4)で 示されていることです。幅があると、ある場所が環境基準を達成しているか否かの判定や環境アセスメントなどで目標値をどう設定するかなどが問題となりま す。この点については,現在の環境基準が定められた直後に当時の環境庁大気保全局長が全国の知事、政令市長あてに出した通達6)の中で、要約すると、一日平均値が0.06ppm(厳密には一日平均値の年間98%値8)が 0.06ppm)以下の場合は環境基準が達成され、0.06ppmを越える場合は達成されていないものと評価する と明確に示しています。すると、この幅は意味を持たないことになりますが、同通知は同時に、新環境基準の維持達成に当たっては、それがゾーンで示されたこ とから①一日平均値が0.06ppmを越える地域はその地域のすべての測定局で0.06ppmが達成されるように努める。②0.04ppmから 0.06ppmのゾーン内にある地域は現状程度を維持し、都市化、工業化が進む場合は大きく上回らないよう努める。③0.04ppm以下の地域は原則とし て0.04ppmを大きく上回らないよう防止に努める。として、0.06ppm以下であれば環境基準が達成されていると評価するとしながら、この時点で 0.06ppm以下である地域の安易な汚染の進行を防ぐための、いわば“保全濃度目標"を示しています。
全国のどの地域が①、②、③の地域に該当するのかについては、この翌年の昭和54年8月に再度環境庁大気保全局長が出した通達7)で、 当時の全国の二酸化窒素濃度の常時監視結果等を基に具体的な市町村名等をあげて、その地域を明示しています。なお、この通達では③の0.04ppm以下の 地域の名称をあげていませんが、①、②以外の地域が該当すると思われます。①、②の地域区分については資料1をご覧ください。地域の環境管理計画や環境ア セスメントなどでその地域の二酸化窒素の環境目標値を設定する場合にはこの地域区分に従った濃度レベルとするのが良いことになります。
なお、二酸化窒素の環境基準は昭和48年に一日平均値0.02ppmと定められました(旧環境基準)が、昭和53年に改訂6)されたものです。この改訂は諮問を受けた当時の中央公害対策審議会が二酸化窒素濃度の指針として、1時間暴露として0.1~0.2ppm、年平均値として0.02ppm~0.03ppmという幅を持った値を答申したことを踏まえています。